
AI生成によるイメージ画像
分からないことを、少し質問しづらいなと感じる瞬間が増えてきたんです。
もちろん、先輩たちは冷たいわけではありません。
質問すれば、ちゃんと教えてくれますし、嫌な顔をされたこともありませんでした。
むしろ、丁寧に説明してくれることの方が多かったと思います。
それでも、声をかけるまでに少し迷ってしまうような空気がありました。
理由はたぶん、みんな忙しそうに見えるからだと思います。
自分の席から見える範囲だけでも、常に誰かが電話をしていたり、資料を作っていたり、メールを打っていたり。
ずっと手が止まっていないような感じでした。
その中で、「すみません、ちょっといいですか」と声をかけるのが、少しだけ勇気がいるんです。
ある日、資料を作っていて、どうしても分からない部分がありました。
説明を受けたはずなんですが、どのデータを使えばいいのかが曖昧で、手が止まってしまいました。
このまま進めると、間違えそうな気がする。
でも、誰に聞こうか迷ってしまう。
隣の席の先輩は電話中でした。
少し離れた席の先輩は、画面をじっと見つめながら何かを打ち込んでいる。
「今、声かけて大丈夫かな」
そんなことを考えているうちに、時間だけが過ぎていきました。
本当は、早く聞いてしまった方がいいのは分かっています。
でも、「忙しいところを止めてしまうんじゃないか」と思うと、どうしても一歩が出ませんでした。
数分間、画面を見ながら一人で考え続けてみましたが、結局答えは出ませんでした。
自分なりに前の資料を見返したり、似たようなデータを探してみたりもしました。
それでも確信が持てず、手が止まったまま時間だけが過ぎていきました。
思い切って、隣の先輩が電話を終えたタイミングで声をかけてみました。
「すみません、この部分って、どのデータ使えばいいですか?」
先輩はすぐに画面を見て、「ああ、そこはこっちの表使うと分かりやすいよ」と、あっさり教えてくれました。
ほんの数秒で解決しました。
そのとき、「もっと早く聞けばよかったな」と思いました。
自分が一人で悩んでいた時間が、少しもったいなく感じたんです。
でも同時に、聞くまでに少し時間がかかってしまった自分にも気づきました。
別の日も、似たようなことがありました。
電話営業のトークで、言い回しを少し変えた方がいいのか迷って、手が止まってしまったんです。
先輩が使っている言葉を真似してはいるものの、「これで合ってるのかな」と自信が持てない。
でも、「こんな細かいこと聞いていいのかな」と考えてしまう。
周りが静かに仕事をしているからこそ、余計に声をかけづらいのかもしれません。
誰かが雑談している空気なら、ついでに聞ける気がする。
でも、全員が集中している中で話しかけるのは、少し勇気がいる。
その静けさが、いい意味でもあり、少しだけ緊張する理由でもありました。
先輩たちは、質問されることに慣れているはずです。
新人が分からないのは当たり前だし、教えるのも仕事の一部なんだと思います。
頭ではそう分かっているんですが、それでも「今はやめておこうかな」と思ってしまう瞬間がありました。
「もう少し自分で考えてみよう」
「あとでタイミングを見て聞こう」
そんなふうに後回しにしてしまうことが、何度かありました。
結局、少し時間を置いてから聞いたり、別のタイミングを探したりしてしまう。
その間、自分の作業は止まったままです。
もしかしたら、周りの人から見たら「止まってるな」と思われていたかもしれません。
そう考えると、余計に焦ってしまう。
でも、だからといってすぐに声をかけられるわけでもない。
そんな微妙な状態が続いていました。
ある日の夕方、ふと気づいたことがありました。
先輩たちも、誰かに質問するときは、少しタイミングを見ているような気がしたんです。
電話が終わった瞬間を狙って話しかけたり、席を立ったタイミングで声をかけたり。
自然にやっているように見えましたが、ちゃんと空気を見て動いているんだなと感じました。
それを見て、「自分だけじゃないのかもしれない」と少し安心しました。
帰り道、その日のことを思い出していました。
質問すること自体は悪いことじゃない。
むしろ、早く聞いた方が仕事はスムーズに進むはずです。
それなのに、なぜか遠慮してしまう。
この会社の空気が特別なのか、それとも自分がまだ慣れていないだけなのかは分かりませんでした。
ただ、静かで真面目な雰囲気の中で、「今声をかけてもいいかな」と考えてしまう自分がいるのは確かでした。
その距離感に、まだ少し戸惑っていた時期だったんだと思います。
少しずつ慣れていけば、もっと自然に聞けるようになるのかもしれない。
そう思いながらも、その頃はまだ、質問ひとつするにも少しだけ勇気が必要でした。
そんな小さな迷いの積み重ねが、社会人になったばかりの自分の一日を、少しだけ長く感じさせていたのかもしれません。
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