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それが、月末でした。
最初のうちは、月初も月中も月末も、大きな違いは感じていませんでした。
自分の仕事は主にテレアポが中心で、一日一日の流れに必死についていくことで精一杯だったからです。
でも、2ヶ月目に入った頃から、なんとなく雰囲気が違う日があることに気づき始めました。
それは、月の終わりが近づいてきた頃でした。
朝礼の空気が、いつもより少しだけ静かに感じる。
話している内容自体は、これまでと大きく変わらないのに、どこか張りつめたものがある。
最初は気のせいかと思っていました。
でも、よく見ていると、先輩たちの様子が少し違うんです。
メモを取る手がいつもより速かったり、
数字を見つめる時間が長かったり、
話を聞く表情が、少しだけ真剣だったり。
特に誰かが怒られているわけではありません。
声が荒くなることもありません。
それでも、なんとなく空気が変わっている。
その違いを初めてはっきり感じたのが、ある月末の朝でした。
上司がホワイトボードに数字を書きながら、現状を説明していました。
「あと少しで届くところがいくつかあるから」
「最後まで動こう」
言葉自体は穏やかでした。
励ますような口調です。
でも、その場にいる人たちの反応が、少しだけ違って見えました。
静かにうなずいている人。
じっと数字を見つめている人。
すぐに手帳に何かを書き込む人。
その様子を見て、初めて思ったんです。
「ああ、月末って特別なんだな」と。
朝礼が終わると、すぐに電話の音が増えました。
いつもより少しだけ慌ただしい。
誰かが席を立って、別の人に何かを確認している。
そんな光景が、自然と目に入ってきました。
特別に走り回っているわけではありません。
でも、全体の動きが少しだけ速い。
その違いは、言葉にすると小さなものかもしれません。
でも、初めてその中にいると、はっきりと分かるんです。
「今日は、いつもと違う日なんだな」と。
テレアポをしていても、少しだけ自分の気持ちが変わっているのを感じました。
今までは、「一本かける」という感覚だったのが、
この日は「一本が少し重い」ような気がしたんです。
自分はまだ、数字を直接背負っている立場ではありません。
それでも、周りの空気を感じているうちに、自然と意識してしまう。
一本の電話が、誰かの数字につながるのかもしれない。
そんなことを、ぼんやり考えていました。
昼休みも、いつもより少しだけ静かでした。
みんな普通に話はしているんですが、どこか落ち着いた感じがある。
笑い声もあるけど、どこか控えめ。
そんな空気でした。
同期とご飯を食べながら、小さな声で話しました。
「なんか、今日ちょっと雰囲気違くない?」
そう言うと、「分かる」とすぐに返ってきました。
「月末だからじゃない?」
「なんか忙しそうだよね」
そのとき初めて、はっきりと意識しました。
ああ、これが「月末」なんだな、と。
午後になると、さらに空気が少し変わった気がしました。
電話の会話が少し長くなっていたり、
席を立って打ち合わせをしている人が増えていたり。
誰かが小さく「よし」とつぶやいたのも聞こえました。
その瞬間、少しだけ周りの空気が柔らいだ気がしたんです。
たぶん、何かが決まったんだと思います。
それだけで、こんなにも空気が変わるんだなと、少し驚きました。
営業の仕事って、数字が動くことで、こんなにも雰囲気が変わるんだ。
そのことを、初めて実感した日でした。
夕方が近づくにつれて、さらに電話の回数が増えているように感じました。
自分の席に座りながら、その様子をぼんやり見ていました。
誰も焦っているわけではない。
怒鳴り声が飛ぶわけでもない。
でも、確実にいつもとは違う。
その空気の変化が、少しだけ印象に残りました。
帰り道、その日のことを思い出していました。
月末になると、空気が変わる。
それは大げさなものではないけれど、確かに感じる変化でした。
自分はまだ、その中心にはいません。
でも、いつかは自分も、その中で動くことになるんだろうなと思いました。
そのとき、自分はどんな気持ちで月末を迎えるんだろう。
そんなことを、ぼんやり考えていました。
営業として働いていると、月の区切りがこんなにも大きいものなんだな、と。
それまでは、ただカレンダーの中の一日でしかなかった「月末」が、
少しだけ特別な意味を持ち始めた瞬間でした。
あの日から、月末が近づくと、自然と周りの空気を感じるようになりました。
まだ遠くから見ているだけの自分。
でも、確実にその流れの中にいる。
そんな実感が、少しずつ生まれ始めていた頃の話です。
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