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この会社では、とにかく数字の話が多い。
最初のうちは、それが当たり前なのかどうかも分かりませんでした。
営業職なんだから、売上の話が出るのは当然だろう、くらいに思っていました。
でも、毎日過ごしているうちに、その割合の多さに少し驚くようになりました。
朝礼では、ほぼ必ず数字の話が出ます。
今月の目標がどれくらいで、現時点でどのくらい進んでいて、残りがどれくらいなのか。
上司がホワイトボードに書きながら、淡々と説明していきます。
怒った口調ではありません。
ただ、落ち着いた声で、現状を確認していく感じでした。
それでも、その話を聞いていると、なんとなく空気が引き締まるのを感じました。
周りの先輩たちは、真剣な表情で数字を見ている。
手帳に何かを書き込んだり、小さくうなずいたりしている。
まだ新人だった自分は、その数字の重さをちゃんと理解できていませんでした。
ただ、「すごく大事な話なんだな」というのは、なんとなく伝わってきました。
その場に立っているだけでも、少しだけ背筋が伸びるような、そんな空気がありました。
朝礼が終わってからも、社内では数字の話がよく聞こえてきました。
電話でのやり取りの中でも、「今月はあとどれくらいで」とか、「この案件が決まれば」という言葉が出てきます。
席の近くでも、先輩同士が小さな声で話している内容が、ほとんど数字に関することでした。
「あと少しで届きそうなんだよね」
「今週中に動ければ変わりそうだけど」
そんな会話が、あちこちで聞こえてきました。
仕事の話なので当然なんですが、それが思っていた以上に多いと感じました。
自分はまだ、具体的な数字を追う立場ではありませんでした。
電話営業を少しずつ始めたくらいで、大きな案件を任されているわけでもない。
だからこそ、その会話を少し遠くから聞いている感じでした。
でも、その中にいると、「この会社は数字が中心なんだな」と自然に感じるようになりました。
ある日の昼休み、同期とご飯を食べながらそんな話になりました。
「やっぱり営業って数字なんだね」
誰かがそう言うと、みんな少し笑いながら「だね」とうなずいていました。
特別に重たい雰囲気ではありません。
ただ、どこにいても数字の話がついてくる、そんな感覚でした。
昼休みの何気ない会話の中でも、数字の話題が出ることがある。
それが少しずつ、この会社の空気なんだと感じるようになっていきました。
午後の時間帯も、同じような空気が続きます。
電話をしている先輩の声のトーンが、少しだけ真剣になる瞬間があります。
画面を見ながら、何かを計算している様子も見えます。
その表情を見ていると、「数字って大事なんだな」と改めて感じました。
案件が動いたときは、少しだけ空気が明るくなるような瞬間もありました。
反対に、うまく進んでいないときは、会話が少し短くなるような気もしました。
その変化を、まだ完全には理解できないまま、なんとなく感じ取っている自分がいました。
その日の夕方、先輩が少し疲れたような表情で椅子に寄りかかっていました。
しばらくして、また画面に向き直って、何かを入力し始める。
その姿を見て、なんとなく「数字を追う仕事なんだな」と実感しました。
自分はまだ、その感覚を完全には理解できていませんでした。
ただ、いずれは自分もその中に入っていくんだろうな、という予感のようなものはありました。
帰り道、その日のことを思い出していました。
今日も一日、たくさんの数字の話を聞いたな、と。
怒られているわけでもないし、プレッシャーを直接かけられているわけでもありません。
でも、自然と数字が中心にある空気がある。
それが、この会社の普通なんだろうな、と思いました。
まだ自分には、そこまでの実感はありません。
でも、そのうち、数字の話が他人事じゃなくなる日が来るんだろうな、と考えると、少しだけ背筋が伸びるような気持ちになりました。
その頃はまだ、遠くからその空気を感じているだけでしたが、それでも印象に残る一日でした。
数字の話が多いというだけなのに、それだけで職場の雰囲気が少し張りつめて感じられる。
そんな感覚を、少しずつ理解し始めた時期だったのかもしれません。
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