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初日から残業になった夜

夜のオフィスで複数の社員が同じ大きさで並び、それぞれ無言でパソコン作業を続けている中、主人公の若い社員も戸惑いながらデスクに向かっている様子を広角で描いたアニメ風イラスト。

AI生成によるイメージ画像

入社初日は、きっと早く帰れるものだと勝手に思っていました。

特別な仕事を任されるわけでもないし、会社の説明や手続きが終わったら、「今日はこのくらいで」と言われて帰る。
なんとなく、そんなイメージをしていたんです。

実際、午前中から昼過ぎまでは、ほとんどが説明の時間でした。
会社のルールや、営業の仕事の流れ、社内の部署のこと。
覚えることは多かったですが、「初日らしい一日だな」と感じていました。

午後も、簡単な資料を見せてもらったり、社内の設備を案内してもらったりして、気づけば夕方になっていました。

少し疲れてはいたものの、まだ気持ちには余裕があって、「今日は早めに帰れるかな」と、どこかで思っていました。

ふと時計を見ると、定時が近づいていました。

周りの先輩たちは、相変わらず静かにパソコンに向かっています。
電話も鳴っているし、誰かが席を立って打ち合わせに向かう姿も見えました。

その光景を見ながら、「社会人ってこんな感じなんだな」と、どこか他人事のように眺めていました。

すると、隣の席の先輩が声をかけてくれました。

「ちょっとこれ、まとめてもらっていい?」

そう言って、簡単なデータを渡されました。
内容はそこまで難しくなさそうで、「はい、大丈夫です」と返事をして取りかかりました。

初日に仕事を任されるのは、少し嬉しい気持ちもありました。
役に立てている感じがして、少しだけ気持ちが引き締まるような感覚がありました。

ただ、思っていたよりも時間がかかりました。

慣れていない作業だったので、どこをどう整理すればいいのか、少しずつ確認しながら進めていく必要がありました。
気づけば、定時の時間を過ぎていました。

そのとき、初めて「あ、今日残業なんだ」と思いました。

誰かに「残業して」と言われたわけではありません。
ただ、任された仕事がまだ終わっていないから、帰るという選択肢が自然と消えていました。

周りを見ても、誰も帰る様子はありません。
みんな当たり前のように仕事を続けていて、時間を気にしている感じもありませんでした。

その空気の中で、自分もそのまま作業を続けていました。

少ししてから、先輩が「焦らなくて大丈夫だからね」と声をかけてくれました。

その一言で、少し気持ちが楽になったのを覚えています。

でも同時に、「これが普通なんだな」とも感じました。

社会人になったら、時間で区切って帰るというより、仕事が終わるまでが一日なんだろうな、と。

作業を終えて、先輩に確認してもらった頃には、外はすっかり暗くなっていました。

「ありがとう、助かったよ」

そう言ってもらえたのは嬉しかったです。
ただ、ふと窓の外を見たときに、「初日からこんな時間までいるんだな」と思ったのも正直なところでした。

会社を出ると、昼間とは全然違う空気になっていました。

ビルの外は静かで、昼の賑やかさが嘘みたいに落ち着いていました。
駅に向かって歩きながら、少しだけどっと疲れが出てきました。

身体が疲れているというより、慣れない環境で一日過ごしたことで、気を張っていたんだと思います。

電車に乗って、座席に座ったとき、やっと少しだけ気が抜けました。

「初日から残業か」

そう思うと、少し意外な気持ちもありました。

もちろん、長時間というほどではありません。
でも、自分の中では「初日は早く帰れるもの」という勝手なイメージがあったので、そのギャップを感じていました。

それでも、不思議と嫌な気持ちはあまりありませんでした。

仕事を任せてもらえたことは嬉しかったし、先輩も優しく声をかけてくれていました。
ただ、「これが日常になっていくのかな」と、少しだけ考えてしまいました。

家に着いてスーツを脱いだとき、やっと一日が終わった実感がありました。

思っていたよりも長い一日でした。

でも、これから毎日こうやって働いていくんだと思うと、少しだけ不安と、少しだけ緊張が入り混じったような感覚がありました。

初日から残業になった夜のことは、特別な出来事というわけではないのに、なぜか今でもよく覚えています。

たぶん、自分が「社会人としての生活」を初めて実感した瞬間だったからだと思います。

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この記事を書いた人

27歳の広告営業。
新規・既存営業を担当。
日々の仕事で感じたことを記録しています。

※プロフィール写真はイメージ画像です。

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