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初めてノルマの話を聞いた日

資料を持った上司が月間目標のグラフを指し示し「ノルマ」の話をする中で、書類を手にした若い社員が驚きと不安の表情を浮かべている日中のオフィスのアニメ風イラスト。

AI生成によるイメージ画像

入社してしばらく経った頃、初めてはっきりと「ノルマ」という言葉を聞いた日がありました。

それまでも、数字の話はよく耳にしていました。
朝礼でも、先輩同士の会話でも、「目標」や「達成率」という言葉は何度も出てきていました。

でも、「ノルマ」という言葉を自分の中で強く意識したのは、その日が初めてだった気がします。

その日は、特に変わったことがあったわけではありませんでした。

いつも通り朝礼があって、仕事が始まって、電話をかけたり資料をまとめたり。
そんな普通の一日でした。

午後の少し落ち着いた時間に、先輩が別の先輩と小さな声で話しているのが聞こえてきました。

「今月のノルマ、あとどれくらい?”」

その一言が、ふと耳に入ってきました。

大きな声ではなかったんですが、妙にはっきりと聞こえたのを覚えています。

その瞬間、「あ、ノルマってあるんだ」と、改めて思いました。

営業職だから、目標があるのは当然です。
頭では分かっていました。

でも、実際にその言葉を聞くと、少しだけ現実味が増した気がしました。

会話の内容は、それ以上よく聞こえませんでした。

ただ、二人とも真剣な表情で、小さくうなずきながら話していたのが印象に残っています。

怒っている様子でもなく、焦っている感じでもない。
でも、軽い雑談のような雰囲気でもありませんでした。

仕事の大事な話なんだな、という空気だけが伝わってきました。

そのあとも、別の場所で似たような言葉を聞くことがありました。

電話をしている先輩が、「今月の数字がまだで」と話していたり、
席に戻ってきた人が、「ちょっと厳しいかもな」と小さくつぶやいたり。

その一つ一つの言葉が、少しずつ頭に残っていきました。

自分はまだ、新人で、具体的なノルマを背負っているわけではありませんでした。

電話営業を少しずつ始めたばかりで、目の前の作業を覚えることで精一杯。
だから、その話はどこか遠い世界のことのようにも感じていました。

でも同時に、「いずれ自分にも関係してくるんだろうな」という予感もありました。

夕方、ふと周りを見渡すと、先輩たちはそれぞれの画面を真剣に見つめています。

何かを計算している人、電話をかけている人、資料を見直している人。
その姿が、いつもより少しだけ重く感じました。

それが全部、数字に関係しているように思えたんです。

ノルマという言葉を聞いたから、そう感じただけかもしれません。

でも、その日から、先輩たちの仕事の見え方が少し変わりました。

ただ忙しそうにしているのではなく、何かを追いかけているように見えたんです。

それが何なのかは、まだ完全には分かりませんでした。

帰り道、駅に向かいながら、その言葉を思い出していました。

ノルマ。

自分にはまだ直接関係のない言葉のはずなのに、少しだけ引っかかっていました。

営業として働く以上、いつかはその数字を追う側になる。
そのとき、自分はちゃんとやっていけるのかな。

そんなことを、ぼんやり考えてしまいました。

怖いというほどではありません。
でも、少しだけ現実を感じた瞬間でした。

今までは、仕事を覚えることで精一杯で、そこまで先のことを考える余裕はありませんでした。

でも、その日初めて、「この仕事は数字と一緒に進んでいくんだな」と、少しだけ実感しました。

まだ自分には遠い話。
でも、いつか近づいてくる話。

そんなふうに感じた一日でした。

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この記事を書いた人

27歳の広告営業。
新規・既存営業を担当。
日々の仕事で感じたことを記録しています。

※プロフィール写真はイメージ画像です。

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